パワーユニットは、エネルギー回生システムを利用したハイブリッド・エネルギーで走る自動車の動力源のこと。略して「PU」とも言う。
走るための動力という意味ではガソリンで走る自動車でいうところの内燃エンジンと同じ役割だが、内燃エンジンはパワーユニットを構成する一部であり、特にF1では後述するパワーユニットの要素の一つであるため、俗に言う「エンジン」とは区別して呼ばれる。
F1のパワーユニットを構成する要素
F1ではパワーユニットを構成する「要素」は「コンポーネント」と呼ばれている。2018年現在のパワーユニットのコンポーネント構成は2014年シーズンから導入された。その当時にルノーF1が公開したパワーユニットのイメージ動画がコンポーネントの関連性を簡潔に表現している。
コンポーネントは以下の6つ。
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ICE(アイ・シー・イー)
内燃エンジンを意味するInternal Combustion Engineの略。
通常のガソリンを燃やして走る、いわゆる純粋なエンジンの部分。
4ストローク、排気量は1600cc、V型6気筒、90度バンク、15000回転を超えてはならないと技術規則で規定されている。 -
TC(ティー・シー)
ターボチャージャー=Turbo Chargerの略。
排気ガスのエネルギーでタービン(羽根車)を回し、コンプレッサーで圧縮空気をエンジンに送り込むことで燃焼効率を上げ出力を向上させる。またタービンの軸に直結されたMGU-Hを駆動する。 -
MGU-K(エム・ジー・ユー・ケー)
Motor Generator Unit – Kineticの略。Kineticは運動を意味する。
MGU-Kには大きく分けて2つの役割がある。- 減速時に熱として捨てられてしまう運動エネルギーを電気に変え、ESに電気を蓄える役割
- ESに蓄えられた電気をタイヤの駆動力に変える役割
ちなみに、上記2の電気を使って駆動力を生み出すことを「デプロイメント」と呼ぶことが多い。
(デプロイメントは「作動」「活用」などを意味する英語) -
MGU-H(エム・ジー・ユー・エイチ)
Motor Generator Unit – Heatの略。Heatは熱を意味する。
TCから受けた駆動でモーターを回すことで、排気ガスの熱エネルギーを電気に変えるユニット。 -
ES(イー・エス)
Energy Storeの略。
MGU-KとMGU-Hで作られた電気を蓄積する電池(バッテリー)。モノコック内に配置することが義務付けられる。 -
CE(シー・イー)
コントロール・エレクトロニクス=Control Electronicsの略。
パワーユニットだけでなくギアボックス、クラッチ、ディファレンシャル・ギアなどを制御・管理するコンピュータユニット。
どのパワーユニット・メーカーもFIAが指定する共通のCEを利用しなければならないと規定されており、2018年現在はマクラーレン製のものが利用されている。ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる。
F1でのパワーユニットのコンポーネント交換によるペナルティ
2018年と2019年の競技規則では、それぞれのコンポーネントについて1シーズンに使用できる機体数に以下の制限がある。
- ICE、MGU-H、TCは、3機まで
- MGU-K、ES、CEは、2機まで
故障などで交換を余儀なくされ、上記の数を超えて使用しなければならなくなった場合、グリッド降格ペナルティが科せられる。そのシーズン最初の追加コンポーネントの場合は10グリッド降格ペナルティ、次以降の追加は5グリッド降格ペナルティとなる。
それぞれの機体は一度FIAによる検査を受けると、ほとんど仕様を変更できないため、各パワーユニット・メーカーは交換のタイミングを見計らって、性能向上を試みた新しい仕様を投入することが多い。